ワケアリ(オカルトファンタジー)
「ちょっとチェス君だっけー?リオンじゃ話にならないんだけど」
「え!?…えぇと…」
急に話題を振られて仕方なくおずおずと姿を現したチェスは、店のスペースへと戻り、リオンからの叱責がこないだろうかと、怯えながらも、話を聞く気さえないリオンと、困った顔で唇を尖らせている彼を交互に見て話の見えない展開について首を傾げた。
そして思い出す、リオンの友達兼師匠の話。
「リオン、この人フィン、って人…?」
「え、何リオン、俺の噂してたの?そうそう、俺がフィンってーの、よろしく」
パッと表情が明るくなり、握手を求めるように手を伸ばしてきたフィンに対して、リオンは心臓でも抉り取るのではないかと思うほどの眼光でチェスを睨みつけた。
『余計なことを言うな』と何も言わずに目だけでこれほど伝えることの出来る人間、もとい死神はそうはいないだろう。
とりあえず握手を交わし、少しだけ和やかなムードに(フィンだけ)なったところで、フィンはチェスにニッコリと屈託の無い笑顔を向けて、今日この店に来た理由を説明しだした。
リオンは身体ごとそっぽを向いて、聞く気にもならないようだ。
間に挟まれたチェスはどうする事も出来ないまま、とりあえずはフィンの話を聞くしかない。
「あのさ、俺ね、ちょっと用事があってさ」
「はぁ」
「断る」
間髪いれずに放たれる、いっそ清々しささえ感じられるリオンの返答。