ワケアリ(オカルトファンタジー)
先ほどから向けられていた屈託のないフィンの笑顔が一瞬固まった所をチェスは見逃さなかった。
はっきり言って、怖い。
ニッコリとチェスに向けていた笑顔のまま、リオンへと向き直る。
「だーかーらー、俺の話を聞けっつーんだよこの冷凍脳ミソ」
「聞く気にもならんとさっきから言ってるだろうが、とうとう耳まで腐りきったか温暖化脳ミソが」
「テメェそれが師匠に対する言葉か!一回生き返って一般常識とマナー覚えてからもっぺん死んでこい!」
「生憎だがお前を師匠だと思ったことは一度もないな、お前こそ一度生き返って、その思い込みの激しさを直してから死んでこい」
リオンが…あのリオンが低レベルな言い争いしてる。
チェスはフィンの感情的な言い争いと、感情的にはならないまでもフィンに言い返しているリオンを見て居た堪れない気持ちになった。
「リオン」という人間像、もとい死神像がガラリガラリと音を立てて崩れていくような感覚がしたのだ。
ショックはショックだが、若干お門違いな安心感さえ芽生える。
あぁ、人間っぽい所もあったんだ、と。