ワケアリ(オカルトファンタジー)
そういえばリオンに初めてフィンの話を聞かせてもらったときも、切って捨てたような言い方ばかりだったな。
そんなことを思い返しながら、チェスはそのレベルの低い言い争いをとりあえず隣で聞いていた。
もう二人の眼中に自分が入っていないことは気付いていたが、離れる事も憚られたのだ。
きっとまた呼ばれる、そんな確信が心の底で確実にあったのである。
案の定、フィンによって言い争いの中に自分も投入された。
「な、チェス君!リオンって絶対モテないよな!」
「だからお前の低レベルな基準と合わせるなと言ってるだろうが」
まぁ確かに顔だけ見ればモテるかもしれないけど、中身を見たら全員が退くだろうな。
そんなことを考えながらチェスは曖昧に笑って返すしかない。
リオンも、多分フィンも怒らせたら面倒なのだ。
どれ程バカみたいな会話をしていたとして、彼ら二人は死神界の騎士と呼ばれるほどの(この言い争いを聞いているとそんな事微塵も感じられないけれど)本当は恐ろしいほどの実力と魔力を持っている死神なのだ。
そんな話を教えてくれたのはリオンの使い魔であるカラスで、フィンが「白の騎士」、リオンが「黒の騎士」とされているらしい。
二人の、人間を死に追いやる才能や魔術などは、死神界でも噂されるほどに秀でている。
そのお陰で本人達の了承無く、二人は死神代表とされている。
だが、仲はトコトン悪いらしい。
一体、出逢ってからフィンがリオンの前から姿を消すその二百年の間に、何があったのか。