ワケアリ(オカルトファンタジー)
黙殺。
チェスは今、この世の黙殺の中で、最優秀を与えたとして誰からも異議を唱えられないだろう、黙殺を目の当たりにしている。
カンカンと乾いた打音が響く店内で、チェスはとりあえず、いつもの仕事である紅茶を入れて、リオンの機嫌を少しだけ直している。
放って置くのも怖いので、紅茶を届けてもキッチンへと戻らずにリオンの指定席の傍で何をするでもなく店の様子を眺めて。
眺めているその店内は、いつものこげ茶とオレンジの色の中に、珍しく白を交えて、いる。
その白というのは、死神界で『白い騎士』と呼ばれ恐れ敬われているフィンと言う死神で、リオンの師匠(リオンは否定している)であり、友達(リオンは否定している)なのだが、今は恐れ敬われている面影もなく、惨劇の起きた店の調度品や壁を直している。
死神と言うのはある程度の魔術(黒魔術ともいう)は使え、その魔術は破壊などの力を持ってはいるが癒す力は殆ど無く、白魔術などの人の役に立つ魔術もほぼ勉強しないようだ。
なので『白い騎士』と呼ばれる名高い死神にも拘らず、金槌で調度品や壁の補修をしている。
「つーか、俺がしたんじゃねぇのに……性格ひん曲がってるリオンが自分でぶっ壊したのに」