ワケアリ(オカルトファンタジー)
黙殺。
目を閉じ、神経を集中させ、まるで瞑想でもしているかのように、それは凄い黙殺ぶりだった。
相手の声や行動などさることながら、存在、生死自体さえも黙殺している。
相手にすればキリがないと気づいているのだろう、リオンはそんな声にも興味を示さずに、ただ黙々と本を読んでいる。
「お前さぁ、そんな無駄な本読む前に壁と調度品の補修が出来る魔術でも勉強しろよ」
疲れたー、と大きく伸びをし、叫びながらとりあえずの補修は終わったようで、フィンは肩を軽く叩いた。
「よければ紅茶どうぞ」
チェスはティーカップに紅茶を注ごうとポットを手に取ったが、フィンはそれを手の平を見せて制止させる。
そして、一言。
「いや、いい。俺葉っぱ飲むの好きじゃないんだよな、うまい?それ。俺にはわかんねぇ…それよりさ、珈琲ある?」
死神の主食は魂で、人間の食べ物は口にしない。
いつだったか、リオンに聞いたとき、『食べ物はステーキも、パンも、何を食べても泥団子でも食べてるような気分になる』と答えられた。
飲み物は受け付けるらしいので様々なものを飲めるわけだが、リオンは紅茶以外を口にはしない。
勿論、珈琲も。