ワケアリ(オカルトファンタジー)
チェスが出かける暫く前。
店の壁と調度品が崩壊する、ちょっと前。
「使い魔が行方不明になったんだ」
フィンは寂しそうに語った。
その表情にはもう一つ、怒りも微かに混じっている。
「使い魔って…」
リオンは少し不愉快な表情をそのままに説明をしてくれた。
「本来使い魔は、主人の傍につき、ともに行動するのが常だ。俺のカラス二匹も、外の木に止まって命が下るのを待っている。それがヤツらの仕事だ。そして使い魔の姿はカラスだけではなく、クロネコやコウモリ、フクロウもいるし、人間の形をした使い魔もいる」
続けて、フィンが説明をする。
「その全てが言語を習得してて、霊感が強い人とか、チェス君みたいに呪いに掛かってしまった人と会話する事も出来るんだよ。俺の使い魔は猫。白くてふわふわの毛を持ったペルシャ猫なんだよ」
それでは、どれが使い魔でどれが普通の猫なのかわからないのでは、とチェスは首を傾げる。
話しかければわかるだろうが、いきなり喋られたら驚く。いつかの、人形のように。