ワケアリ(オカルトファンタジー)
対して、リオンと呼ばれた黒尽くめの男は、少しずれてくる眼鏡をクイ、と上げながら、しかし顔は上げずに答える。
「チェス、鈴は対になっていると知っているか」
「へ?」
チェスと呼ばれたその少年は、調度品の影から顔を出して首を傾げる。知らない、と言いたげに。
ちらりと、長い黒髪の間からその鋭い目をチェスに向けたリオンはまた本へと視線を戻しながら続ける。
不機嫌なのではない、彼の常だ。
チェス以外の人間がこの態度をとられたら、怯えるか、不愉快に思うだろう。
思われても、リオンにとっては興味のないことなのだが。
「一つの鈴には、もう一つの呼び合う鈴がある。その鈴は片割れに会いたがってる」
「…そうなんだ」
*