ワケアリ(オカルトファンタジー)
チリン、チリン、チリン、
何度か鳴らされて、沈黙。
少女は歩き出すと、リオンの元へとやって来た。
「これ、ください」
「…どうぞ」
「……あの、お金」
「結構です。ただ、大切にしてあげてください。彼らは先代に愛され慈しまれてきたもの達ばかりなので、とても寂しがっているのです」
少女は訝しく思ったが、鈴なんて高が知れた金額だろうから、とさして気にする様子もなく、「有難う御座います、…じゃあ」と言って店を出て行った。
少女の手には、赤い紐が雪の結晶のような形に編まれた、その先端に人差し指の爪ほどの大きさの鈴がついたストラップが握り締められていた。
少女が出て行って、暫く。
チェスは雑巾を片手にリオンに問いかけた。
「持ってっちゃった…あの子に渡して、鈴はちゃんと片割れに会えるの?」
「あぁ、会える。きっとな」
*