ワケアリ(オカルトファンタジー)
そして、私はひとりで帰った。
いつもは二人で帰っていたが、マネージャーの仕事を「家の用事があって」と今日だけ休ませて貰って、奏が着がえている間に帰った。
仕返しのつもり。
私だって、抱きしめてほしかった。一緒に頑張っているんだ、「しんどいね、でも頑張ろう」と互いに支えあいたかったのに。
思いながら涙が出てきた。
やはりどこか不安が募っていたのだろう。
人気のある人と付き合っているというコトは、同時に、自分がいつ捨てられるのかと言う、恐怖がまとわりつく。
奏はそんな人間じゃない、そう思っても、どこか不安な所はある。
ファンの中には私よりも可愛い子がいるのだ。不安にならないわけがない。
通り過ぎる車を何台も見送りながら、私は緩く曲がる背中のどこかで、あの少し大きめな手が、ポン、と触れてくれることを願っていた。