ワケアリ(オカルトファンタジー)
奏の手首にはミサンガが付けられていて、そのミサンガには小ぶりの鈴が括りつけられていた。
歩くたびに、その鈴は鳴った。
中学生の頃からずっと付いていたその丈夫なミサンガと鈴は、奏が動くたび、奏が手を振るたび、響いた。
玄関先まで、奏が迎えにやってくると、すぐにその鈴でわかる。
チャイムを押す前に、私はドアを開けて奏を驚かせたものだ。
その鈴は、奏が事故に遭ったときに潰れて、引き千切れてしまって、その無残な姿は棺桶に入れられた。
それを、思い出したのだ。あの鈴を見て。
だから、鳴らしてみた。期待はしていなかった。
しかし、その音は正真正銘、奏の鈴と同じ音が鳴ったのだ。