ワケアリ(オカルトファンタジー)
「チェス」
呼ばれた少年は、紅茶を作る手を止めることなく、「何?」と声だけを返す。
リオンは紅茶にうるさいので、作っているときは目を離してはいけないのだ。
葉が開き始め、決められた時間を蒸らす。
作り方は恐ろしいほど細かく叩き込まれたので、厭でも覚えている。目を瞑っても作れるだろうが、それをしないのは、手を抜いた後が怖いからだ。
対して、のんびりと本を読んでいたリオンはその答えられた声に、返す。
「鈴の音はどんな音か知ってるか?」
「え、チリン…じゃないの?」
「そうだ」
時間ピッタリ。
血をお湯で溶かしたような色の紅茶が、綺麗なティーカップに注がれる。