ワケアリ(オカルトファンタジー)




数日後。


俺の書いた原稿は一回の訂正もなく(正しく言えば訂正する時間もなく)本になった。


これでも名の知れた作家の俺は、発売日が伸びると苦情が殺到するのである。


なので、訂正させたくても出来なかったのだ。


今回の作品は、とある県の女子中学生が飛び降り自殺をした事から始まる。


その女子中学生は、この世に不満を抱いていた。そして、自分が死ぬことで生贄が成立し、異界に巣くう、魔物を呼び出し、その魔物が女子中学生が生前、怨みを抱いていた人間を次々と殺していくという物である。


魔物は世界を覆いつくそうとするが、そこで現れるのが、一人の魔法少女。


彼女の力で魔物は退治され、平和な世界になる。


という一連の流れを上下巻で発売する。


今回はこれがシリーズ初で、まだ魔法少女を詳しく書いていない。ましてや上巻、ということで、そこでは不穏な始まりと、魔物の話、そして、魔法少女が意味深げに顔を覗かせて次巻へ続く、という事になっている。


発売と同時に、本は飛ぶように売れた。


数週間もすれば、感想の手紙や、後編を熱望する声が届くだろう。


俺は後編を手掛けるそれまでの暫くの休みをゆっくりとすごした。


もう一度あの店に行こうと思ったが、どうやってあの場所へ行ったのかを思い出せず、結局もう一度脚を運ぶことが出来ずに休みが終わってしまった。









そして、事件は起こった。










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