ワケアリ(オカルトファンタジー)
「何かお探しですか」
低い声が、何処かから聞こえた。
その予想外の声に彼は肩を震わせ、その声が聞こえた方へと目を向ける。
調度品の中を抜けた、膝ほどの段差に、一人の男が客に目を向けることもなく本へと視線を落としていた。
店の人間だろうか。
そんな心の中の問いに答えるように、その男は眼鏡をクイ、とあげながらもう一度言った。
視線は、本。
「何か、お探しですか」
「あ、…あの、誕生日プレゼントを…探してたんですが、流石に子どもにあげるような物はないですよねぇ」
ははは、と軽く笑い声を上げながら頭をかいた。