ワケアリ(オカルトファンタジー)
*



ピンポーン




真っ暗な室内に、電子音が響く。


俺はジッと息を潜めてその音をやり過ごす。マスコミはもう、近所を徘徊してはいない。


警察がこの間まで入念な現場検証を行っていた俺の家の前、数日前まで血の海と化していたその場所は今は血が綺麗に洗われ、微かな汚れをまだ残してはいるものの、以前と同じよう濃いねずみ色のコンクリートを晒し、静かになっていた。


何日か警察の事情聴取に付き合わされた俺は疲れ果てていた。


マスコミの事件だけならばまだ数時間で開放されたが、俺の本に感化された女子中学生が自殺をしたのでは、という疑いを持たれた所為で、数日間警察に事情を聞かれる羽目になってしまったのだ。




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