ワケアリ(オカルトファンタジー)
その衝撃に俺は一瞬、自分の身に何が起こったのか理解が出来なかった。
未だに覗き穴は暗い。
ふら、ふら、と二・三歩後ろに後ずさり、片目を覆う。
覆った手には滑り気のある液体が簡単に手の平に溢れ返り、ボタボタと玄関を濡らした。
何だ、これは…―――
思った直後に理解に及び、激痛が脳内を、脊髄を駆け巡り、俺は片目を押さえて蹲った。
前が見えない。
溢れ返る痛みと涙で固く閉じた両目は視界を全て遮った。
その中で先ほどの衝撃が、頭を強く押され、覗き穴に眼球を潰された衝撃だというコトに気付いた直後、俺の背中に冷たくておぞましい塊が形容しがたい音と共に、体内に侵入した。
それは、侵入すべき場所を無視し、侵入できるはずのない場所を無理やりこじ開け、内臓をたらふくと溜め込んだその身体に、唯一つの目標目掛けて突き刺さった。
突然の出来事に、脳は痛みを送ることさえも忘れて、呆けていた。