ワケアリ(オカルトファンタジー)
誓う鋏
ワケアリ No.4
『誓う鋏』
「リオン、最近女子中学生の飛び降りが流行ってるらしいよ」
色素の薄い茶色の髪をショートにしているカジュアルな格好をした十代前半ほどの少年が、先程買ってきたケーキを食べながら何の話題もなく過ぎていく無音の時間に歯止めを掛けるべく、言葉を漏らした。
「変なものが流行ってるんだな」
リオンと呼ばれた黒尽くめの男は、クイッと眼鏡を押し上げながら、興味もなさそうに本へと落とした目をそのままに答える。
「変な小説に感化されたからだとか、テレビでは言ってたけど」
「感化された問題よりも、感化されるほど最近の人間の精神が脆弱になってきたことを批判すべきだと思うがな。……チェス、その小説の名前は?」
「なんだっけ?間丘宏の新刊だってのは言ってたけど」
曖昧な記憶を手繰るように宙を見上げるチェスに、リオンはバッサリと言い切った。
「『放課後』だな。女子中学生が世界を恨み、自らを生贄にして魔物を呼び出すという…」
「リオン知ってるんだ?」
「…面白みもない夢物語だった。間丘宏の作品の何処に価値があるのかが皆目見当が付かない」
『誓う鋏』
「リオン、最近女子中学生の飛び降りが流行ってるらしいよ」
色素の薄い茶色の髪をショートにしているカジュアルな格好をした十代前半ほどの少年が、先程買ってきたケーキを食べながら何の話題もなく過ぎていく無音の時間に歯止めを掛けるべく、言葉を漏らした。
「変なものが流行ってるんだな」
リオンと呼ばれた黒尽くめの男は、クイッと眼鏡を押し上げながら、興味もなさそうに本へと落とした目をそのままに答える。
「変な小説に感化されたからだとか、テレビでは言ってたけど」
「感化された問題よりも、感化されるほど最近の人間の精神が脆弱になってきたことを批判すべきだと思うがな。……チェス、その小説の名前は?」
「なんだっけ?間丘宏の新刊だってのは言ってたけど」
曖昧な記憶を手繰るように宙を見上げるチェスに、リオンはバッサリと言い切った。
「『放課後』だな。女子中学生が世界を恨み、自らを生贄にして魔物を呼び出すという…」
「リオン知ってるんだ?」
「…面白みもない夢物語だった。間丘宏の作品の何処に価値があるのかが皆目見当が付かない」