ワケアリ(オカルトファンタジー)




女の仕事のパートナーは作家の間丘宏である。女はその作家の担当だ。


間丘の家の近くまで来ると、報道陣らしき人物がちらほらと此方の様子を伺っている。


意にも介さずさっさと玄関へと向かうと、インターフォンを押した。背後でカメラのシャッター音が聞こえる。



『はい』



「奉可緒(マツリカオ)です」



鍵の開く音がして、女はドアを開いて中へと入る。


遠くからいくつものシャッター音が聞こえて、扉を閉めたと同時に鳴りを潜めた。


間丘はまだ自分の家の周りに報道陣がちらほらといることを知らないでいる。


奉は聞こえないように溜息を漏らして彼の仕事場であるリビングへとやって来た。



『本日未明、○○県××市にある中学校で女子中学生が屋上から飛び降り、自殺しました。今月に入って四人目の女子中学生の自殺に、各地では、カウンセリングを始める学校も増え…』



リビングのテレビでは連日相次いでいる女子中学生の自殺について報道していた。


テレビでは間丘の名前を口走る人間はいなかったが、これ以上増えていけば少し厄介だ。



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