ワケアリ(オカルトファンタジー)



このまま何も起こらず、報道陣もさっさと諦めて帰ってくれればいいのだが。


カーテンの隙間から外を覗くと、チラチラと辺りをうろついている報道陣が見えた。


隙間なくカーテンを閉めて、減った真中の湯飲みにお茶を注いで、奉は他の事に思考を移した。


例えば間丘の新作。


ファンタジーを、と言っていたのに出来上がったものは暗い暗いオカルト交じりのファンタジーで、奉が思っていた作風とはまるで違っていたのだ。


間丘はごく普通のファンタジー、例えばある宝石を求めて旅をする、だとかそういった話の構成がうまい。


奉はそっちを書かせたかったのだが、間丘は乗り気ではなく、締め切りを大幅に過ぎギリギリに出した、『それ』を出版させた。


話としては面白いが、現実のファンタジーの融合が、奉はどうも好きになれなかった。
どちらかにしてほしかったのだ。


ファンタジーならファンタジー、現代ものなら現代もの。


二つを組み合わせると、ファンタジーも現代ものも、うそ臭く感じるのだ。


そんなちょっとした不満を心の奥に沈めて、出版した物は仕方がないと次回作の原稿が出来上がるのを見守るしかない。


ペンが紙の上を走る音と、時計の秒針が動く音。


微かに奉の溜息が混じる。







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