ワケアリ(オカルトファンタジー)



記憶にはない、その過去が少しだけ思い出せそうで、それでも思い出せなくて、もどかしい。


血がうずくような、気配がする。



『私は、……』



その声はまるで前世の自分が目を覚ましたかのように、近い場所で響いた。


女のようで、男のような、若いような、老熟したような何の判断も付かない声。


聞こえたというよりは、感じた。














その後の記憶は、ない。











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