*クモリガラス*
よく見る女の子が、玄関に向かって歩いて行った。
あれはたしか
滝沢くんと同じクラスの子。
「あ、蓮〜っ!」
どうやら滝沢くんも、そこに戻って来たみたいで。
なぜか私は、わけも分からず陰に隠れた(汗)
「ちょっとコレ、ロッカーに入ってたよ!蓮はなんでもすぐに無くすんだから。もらったらその場で書いてよね」
「悪ぃ悪ぃ。
そんなコワイ顔で怒るなって」
「蓮がそうさせてんでしょ!」
その子がふざけて
滝沢くんの腕を叩く。
それを滝沢くんも
笑いながら受け止めて。
なんか…いいな…
同じクラスなだけで、あんなに仲良くなれるのに
私は全然
初対面のようにぎこちない。
私だって、ずっと滝沢くんの近くで勉強してた。
でも、あんなふうに気安く近づくこともできなくて。
つまり私と滝沢くんの間には
有るようで無かった
中学二年の一年間。