*クモリガラス*
開いていた窓からは、夕暮れの風が吹き込んでくる。
濡れた頬が、冷たかった。
「うぉ!
今日もすごい量の落書きだな」
……っ!
濡れた目を袖口でこすって、しゃがんだまま振り返ると
そこには
いつものジャージ姿の滝沢くん。
走って来たのか、ちょっと息が切れてて…
「たっ…滝沢く」
「もしかしてこれ原田が書いた?」
「えっ!?」
そう言われてもう一度窓を見上げると、ずいぶん高い所にはでかでかと
『LOVE』の文字…
「ちっ!ちがいます!!」
意味的には似たようなことを書いてるけど、こんなに堂々と書ける私じゃない(汗)
「そっかぁ〜。でもここまでデカイと、グラウンドからでも読めるんだよな」
…え?……なに?
滝沢くんは一人納得するように腕を組みながら私を見た。
「原田が書く文字ってちっこくてさ、全然読めねーの」
「はっ…や…」
それは…当然読めることなんて
目的にしてないもん。