*クモリガラス*
クラスが離れた時だって、それはすごく悲しかったよ。
話しかけることもできない私が、一緒にいられた貴重な時間。
でもこうやって放課後になれば、窓から眺めることはできたから
それでいいんだって、自分を納得させて。
「やっぱりカッコイイ〜」
「まぁ、否定はしないけどね」
窓を開ければ、冬の空気がそのまま顔を包み込んで行く。
告白だなんて、そんなことできるわけもない。
でも…気持ちくらい届いたらいいなって思ってたから。
「だからってそんなところにスキとか書いてたって、滝沢くんには見えないと思うけどね」
「わーっ!もう、見ないでよぉ」
慌てて曇ったガラスに手をこすりつける。
窓に書いた『スキ』のメッセージは、こうやって何度も冬の温度に消されていくんだ。