*クモリガラス*
「おーい、恭子。帰っぞ〜」
「サトシ今行く!じゃあね、郁」
彼氏に呼ばれて、教室を出て行く恭ちゃんに手を振る。
恭ちゃんは、自分から今の彼氏に告白した。
他の友達にもそういう子は沢山いるけど、私にはやっぱりそんなことできないから。
「こうやって窓に書くだけで、精一杯なんだよね」
窓に指をなぞらせるたび、キュッと小さな音がなる。
冷たいガラスにも、私の胸にも。
いいな〜、恭ちゃん。
私も滝沢くんと、一緒に帰ったりとかできたらいいけど。
…うぁ〜
想像しただけで緊張する。
っていうか
そんなことありえないしっ!
私は引き出しに入ってた教科書を慌てて鞄に入れた。