*クモリガラス*
教室の窓には、誰が描いたか分からない落書きがたくさんある。
変な絵も
よくわからない言葉も。
どれが誰のものかすら、わからないくらい。
そんなたくさんの指の跡の中に、私の書き続けるメッセージはあって。
「いつか届けばいいのに…」
確率の低い願いごと。
いつかと言っても、あと三ヶ月もすれば卒業になっちゃう。
私は少しずつ冷えて行く手の平にふーっと息を吹きかけて、玄関に向かおうと手袋をはめながら廊下に出た。
すると
「やっべー、明日提出なのにっ」
向かいの階段から、慌ただしく走ってくる声がする。
わっ、滝沢くん!