最推しと出会えた日
「えっ? どうしてこのチケットがあるの? 先輩、買えたの?」
「まあな。で、泣き止むのか? ずっと泣いてんのか。 今すぐ決めろ!」
「なっ、泣き止む。けどちょっとだけ待って。悲し泣きじゃなくて嬉し泣きに変わったから。先輩、大好き~。ふぇーん」
先輩がくれたチケットを握りしめて、嬉しさのあまり勢いで先輩に好きだと言ってしまった事に気付かなくて。
「ふぅぅっ。もう大丈夫です。泣き止みました」
「よし。良く泣き止んだ。えらいな、茜」
そう言えば、さっきから先輩は私のこと名前で呼んでくれてない?
「茜って?」
自分の名前を疑問形で先輩に言うと、
「はぁ? さっき自己紹介してくれた時に本栖茜って言ったよな? 茜でいいんだろ、名前」
「はい。私は茜です。 って、えーっ!!」
急に名前を呼んでもらって驚いた。
「嬉しい。優希先輩に名前を覚えてもらえた。それにこのチケットも嬉しい」
「うん、喜んでもらえて良かった」
「本当にチケットいいんですか? 優希先輩の分もちゃんとありますか?」
「ああ大丈夫、俺のもあるよ。なんならライブ一緒に行くか? 整理番号連番だしな」
「ええええっ! そんな。優希先輩、一緒に行ってくれるんですか?」
先輩はそれには答えずに頷くだけだった。