最推しと出会えた日

先輩が立っている側のドアが開いたので先輩は先に電車を降りた。

私も電車を降りなきゃ。

電車を降りようと一歩踏み出したところで誰かに背中を引っ張られた。

えっ? 私の背中ってドアだったよね? 誰かいたっけ?

引っ張られた先を見ると、私のカバンに付けている先輩とお揃いのキーホルダーがドアに挟まってる!!

ま、まずい。

引っ張ったら取れちゃう。

でも電車から降りないと遅刻しちゃう。

ドアのところでガサガサしてる私に気付いたのか、先輩が私の所まで戻って来てくれて、

「何やってんの? 降りないと遅刻するけど?」

うわ! 先輩から声を掛けてもらえた。

一度電車から降りたのに戻って来てくれるなんて。

それに声を掛けてもらったことにもびっくりして、咄嗟に返事が出てこなかった。

「ね、聞いてる?」

「あの、どうして? どうして戻って来てくれたんですか?」

「だって俺に『ちょっと待って、行かないで』って言わなかった?」

私、そんなこと言ったの?

え? 言ってたの? 無意識なんですけど。

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