最推しと出会えた日
「私、本当はずっと気付いていたんです。優希先輩もこのキーホルダー持っていますよね?」
私は思い切ってキーホルダーのことを聞いてみた。
「ああ、これ?」
そう言って先輩はバンドのキーホルダーを見せてくれた。
「優希先輩もこのバンド好きなんですか?」
私は即答で「好きだ」って言ってくれると思っていたのに、先輩はしばらく考え込んでしまって。
「うーん、好きか嫌いかって聞かれると微妙だな」
「ええええっ! どうして? どこが嫌いなの? ライブちゃんと観た? ねぇ、何がイヤなの?」
先輩の返事が予想に反した言葉だったから、信じられなくて先輩に食い気味に問い詰めてしまった。
「いや、嫌いではないよ。嫌いじゃないけどさ。あのバンド、次のライブで解散するだろ。解散するバンドに執着は無いかな」
えっ? 嘘でしょ。
バンドが解散するの?
「優希先輩、悪い冗談はやめてください。解散って何ですか? 私をからかってます?」
バンドの解散なんて、聞いたことないよ。
1か月前のライブだっていつも通りだったし。
「嘘じゃないよ。解散のアナウンスも出してるし。ほらこれ」
そう言って先輩がスマホの画面を見せてくれた。
それは公式サイトの記事で、確かに今週末のライブで解散すると発表されている。