ちゅっ

9月20日

 今日は、文化祭二日前。

授業も無くなり、一日中準備に没頭できる。


文化祭では、自分のクラスを使うという条件で、後は基本何をしても構わない。

食べ物を売るも良し。

劇やショーをやっても良し。

お化け屋敷や脱出ゲームをつくっても良し。


俺のクラスでは、ゲームセンターを再現することになっている。

クレーンゲームやガチャなどを手作りし、生徒やお客さんに遊んでもらうのだ。


俺は工業系が得意で、メカいじりが大好きだ。

だから俺は、クレーンゲームの設計図を書いたり、

ガチャの調整をしたりと、

色々仕事を任され、大忙しだ。


ーー





文化祭の準備に、終わりなんてない。

気付いたら、日が落ちていた。



えっもう夜! 7時⁉︎

俺は急いで片付けると、他にも数名残っていたクラスメイトにさよならを言って、ダッシュでバス停に向かった。


バスに乗り、いつもの如く中央病院で降りる。

お見舞いは毎日欠かさない。





コンコンッ


「花織さん……? 来るのが遅くなってしまい、すいません。……、まだ、目覚めませんか? 」

「……。」


今日もダメ、か。

俺は病室を出る。




コンコンッ


「明、今日は来るのが遅くなってごめんな。明……。目、開けてよ……。」

「……。」


夜の月明かりが、優しく窓から差し込む。

いつもとは違う時間帯、環境。


夜独特の静かな雰囲気が、ちょっと涙腺を破壊しかけた。



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