ちゅっ
9月21日
明日はいよいよ文化祭。
皆朝早くから学校に来ては、わいわいと準備に没頭する。
ーー
俺は、文化祭を全力で楽しめない。
頭の中心に、明のことがあるからだ。
明は事故に遭ってあちこち怪我をし、
意識不明になり、
文化祭に行けないどころかいつ目覚めるかも分からない。
とても不安で、心配で。
文化祭なんて、二の次だった。
ーー
俺は今日も病室を訪ねる。
今日は、事故があってから5日目だ。
早いような、遅いような。
とにかく、二人には早く意識を取り戻して欲しい。
俺は今、明の病室の前に立っている。
コンコンッ
さっき香織さんの病室を訪ねたら、やはりまだ意識は戻っていなかった。
明も、たぶんーーーーー。
「明、明菜……。目、開けてよ。」
「……。」
「明日、文化祭だよ。一緒に回ろうって約束したじゃないか。」
「……。」
いつもはすぐに病室を出るのだが、今日は、なぜか無性に話をしたい気分だった。
「あのね、明。俺のクラスでは、ゲームセンターをやるんだ。」
俺は、聞いてもいない明に、話しかける。
「クレーンゲームとか、ガチャとか、たくさんあるぜ。」
「……。」
「俺、クレーンゲームの設計図書いたんだ。凄いだろ。」
「……。」
「……、明、お前、つっこめよ。『自分で凄いって言わないでよ(笑)自画自賛だよ、春くん。』って。お前この前、そう言ってたじゃないか。」
「……。」
いくら話しかけても、返事はない。
いつもは笑って聞いてくれるのに、安らかに眠っている。
いつもはつっこんでくれるのに、それがない。
さみしい。
純粋に、そう思った。
つぅ……
頬を流れ落ちる水滴。歪む視界。
「……っ、明、明菜ぁ……っ! 目、開けてよ。開けろよ。 おい、明菜! 」
「……。」
「…………っ」
この5日間で、俺が泣いたのは事故があったその日だけだ。
それからの4日間分の涙。
出始めたら、止まることはなく。
ずっとずっと、溜まっては流れ落ち、溜まっては流れ落ちる。
さみしい。
ちゅっ
チクタク…、チクタク…、
アナログ時計の針の音がやけに響く病室で。
そのリップ音は、針の音さえもかき消してしまった。
もう、我慢できなくて。
明菜を、手離したくなくて。
そう思ったら、身体が勝手に動いていて。
俺は明菜のおでこに、キスを落とした。
皆朝早くから学校に来ては、わいわいと準備に没頭する。
ーー
俺は、文化祭を全力で楽しめない。
頭の中心に、明のことがあるからだ。
明は事故に遭ってあちこち怪我をし、
意識不明になり、
文化祭に行けないどころかいつ目覚めるかも分からない。
とても不安で、心配で。
文化祭なんて、二の次だった。
ーー
俺は今日も病室を訪ねる。
今日は、事故があってから5日目だ。
早いような、遅いような。
とにかく、二人には早く意識を取り戻して欲しい。
俺は今、明の病室の前に立っている。
コンコンッ
さっき香織さんの病室を訪ねたら、やはりまだ意識は戻っていなかった。
明も、たぶんーーーーー。
「明、明菜……。目、開けてよ。」
「……。」
「明日、文化祭だよ。一緒に回ろうって約束したじゃないか。」
「……。」
いつもはすぐに病室を出るのだが、今日は、なぜか無性に話をしたい気分だった。
「あのね、明。俺のクラスでは、ゲームセンターをやるんだ。」
俺は、聞いてもいない明に、話しかける。
「クレーンゲームとか、ガチャとか、たくさんあるぜ。」
「……。」
「俺、クレーンゲームの設計図書いたんだ。凄いだろ。」
「……。」
「……、明、お前、つっこめよ。『自分で凄いって言わないでよ(笑)自画自賛だよ、春くん。』って。お前この前、そう言ってたじゃないか。」
「……。」
いくら話しかけても、返事はない。
いつもは笑って聞いてくれるのに、安らかに眠っている。
いつもはつっこんでくれるのに、それがない。
さみしい。
純粋に、そう思った。
つぅ……
頬を流れ落ちる水滴。歪む視界。
「……っ、明、明菜ぁ……っ! 目、開けてよ。開けろよ。 おい、明菜! 」
「……。」
「…………っ」
この5日間で、俺が泣いたのは事故があったその日だけだ。
それからの4日間分の涙。
出始めたら、止まることはなく。
ずっとずっと、溜まっては流れ落ち、溜まっては流れ落ちる。
さみしい。
ちゅっ
チクタク…、チクタク…、
アナログ時計の針の音がやけに響く病室で。
そのリップ音は、針の音さえもかき消してしまった。
もう、我慢できなくて。
明菜を、手離したくなくて。
そう思ったら、身体が勝手に動いていて。
俺は明菜のおでこに、キスを落とした。