【書籍化】もふもふ聖獣と今度こそ幸せになりたいのに、私を殺した王太子が溺愛MAXで迫ってきます
城の従者が布を退かそうとして戸惑っている。
フランチェスカは必死に布に噛み付いているシュネーを抱き抱えると二人がかりで布を外すと、グレイシャーがゆっくりと頭を上げた。
シュネーがグレイシャーに飛び掛かるようにして白銀の毛に埋もれている。
小さな尻尾が左右に動いている姿がかわいすぎて胸がキュンとなる。

(よかった……以前よりもずっと元気そう)

グレイシャーは暴れ回るシュネーを諌めるようにして鼻でつつくと荷馬車から降りる。
まだコルビンの目があるためグレイシャーに触れるわけにもいかずにフランチェスカはシュネーを回収するためにグレイシャーの元へ向かった。
グレイシャーに向かって唇に人差し指を寄せて『内緒』だとアピールするとグレイシャーがグルルといつものように喉を鳴らした。

もうひとつの馬車からはコルビンが出てくるはずだが、一向に姿を現さないことを疑問に思っていた。
そんな時、マラキが馬車の前に向かう。
親しげに話す様子はなく、大きく目を見開いたあとに深々と頭を下げている。

マラキの話を聞く限りではそこまで畏まった仲でもなさそうだと思っていたが、扉が開いて馬車から出てきた人物にフランチェスカは目を見張った。
艶やかなアイスグレーの髪と長いまつ毛の隙間からは空の色のような美しい瞳が見えた。
コルビンよりもずっと背が高いその人物は……
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