【書籍化】もふもふ聖獣と今度こそ幸せになりたいのに、私を殺した王太子が溺愛MAXで迫ってきます
「……いいえ?マラキ殿下だけでしたけど」

「本当に……?噂ではグレイシャー様の馬車が通ったと聞いたけど」

「グレイシャー、様がですか?」

「えぇ、そうよ。ここだけの話にするから、わたくしに教えてくれないかしら?」


キャシディはレオナルドのことを聞きたいのかと思いきや、出てきた名前は『グレイシャー』だったことに驚きを隠せなかった。
フランチェスカはこのことをキャシディに隠し通した方がいいと直感で思った。


「グレイシャー様の体調が治った理由を知りたいの。もしかしたらエディマーレ男爵領で何かあったからではないの?」


キャシディの問いかけは鋭いものだった。
レオナルドも共にいたのは知られていないだけでもマシだと思うべきなのだろうか。


「それならば、もっと噂になってもいいような気がするのですが、以前と変わらずのお客様で……」

「……何の話?」


キャシディはフランチェスカの言葉を聞いて眉を顰めた。


「エディマーレ男爵領の話です。キャシディ様もエディマーレ男爵領が最近、観光業に力を入れているのはご存知でしょうか」

「……えぇ」
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