【書籍化】もふもふ聖獣と今度こそ幸せになりたいのに、私を殺した王太子が溺愛MAXで迫ってきます
恐らくキャシディの聖獣である白蛇は当然のようにキャシディの腕に飛びついてきた。
ひんやりとした鱗が肌を滑った瞬間、キャシディは叫び声を上げたくなった。

(なんで……?こんなの絶対におかしい)

項垂れるキャシディは涙をこぼれるのを必死に堪えていた。

誰もキャシディに声をかけることはなく、次の令嬢を呼ぶ声が会場に響くのと同時に少しずつ活気が戻っていく。
心配そうにしている白蛇を振り払うこともできずに立ち尽くしているキャシディの前に小さな影が落ちる。
父でないことはわかっていた。
誰かがキャシディを馬鹿にしてきたのだと思った。

散々、オルランド公爵家の令嬢として肉食獣と契約できることを自慢して回っていたキャシディを馬鹿にするために目の前にいるのだろう、と。
キャシディが涙を拭いて唇を噛んで顔を上げると、そこには少しクセのあるアイスグレーの髪とスカイブルーの瞳を細めたレオナルドが立っていた。

キャシディは父は仕事の都合でよく城を出入りしていた。
レオナルドとは一緒に遊んだりするものの感情の起伏が少なくつまらない。
優しすぎるし気弱な部分もあり自分の結婚相手には相応しくないと思っていた。
キャシディはレオナルドにも自分は誰よりも優れた聖獣と契約できるはずだと自慢していた。
しかし結果はどうだろうか。お世辞にも素晴らしいとは言えない。
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