【書籍化】もふもふ聖獣と今度こそ幸せになりたいのに、私を殺した王太子が溺愛MAXで迫ってきます
「キャシディ、大丈夫?」

「……っ」


キャシディはグッと手のひらを握った。
いつものようにレオナルドの顔を真っ直ぐ見ることはできない。


「大丈夫。どんな聖獣でもキャシディはキャシディだよ」


レオナルドの言葉に目を見開いた。顔を上げると彼は優しく微笑んでいる。
レオナルドの態度に嬉しい反面で悔しさや悲しみしかし涙が溢れそうになった。

レオナルドの伸ばされた手を振り払い、キャシディは父の元へ戻ることもできずに城を飛び出した。
門を抜けて走ったキャシディは白蛇を邪魔だと罵った。


「あっち行け!お前はわたくしの聖獣じゃないっ」


キャシディは錯乱しながら白蛇を追っ払った。
そして訳もわからずに走り、馬車の前に飛び出してしまう。

しかし白蛇はキャシディを守るように一瞬だけ大きくなったと思いきや、そのまま馬車に跳ねられてしまう。
真っ二つになった体。
聖獣は基本的に怪我をしたり、病になったりしない。だが、致命的な怪我を負ってしまえば、戻らないこともある。
白蛇がキャシディを守ろうとしたのだとわかったが、もう手遅れだった。馬車は逃げるようにどこかに走り去っていった。キラキラとした光と共に出会ったばかりの白蛇は消えていく。
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