自国最強の騎士団長様は私が守ります。だって私、世界最強ですから!
そう言っていやらしく笑う男に向かって、リリアーヌはホウキを剣に見立て握るとスッと瞳を細めた。するとその瞳がペリドット色から青緑色へと変化する。まるで人が変わったかのような雰囲気を醸し出したリリアーヌに向かって、男が飛びかかってきた。それをリリアーヌはヒラリと交わし、ホウキの枝を男の溝うちに叩き込んだ。すると男は「ぐえっ」と苦しそうに腹部を押さえ地面に膝を付いた。
「ふう……バカな男。女だからと油断するからですよ」
ファサッと右手で髪を掻き上げると、人々の息を呑む音が聞こえてきた。そこに息を切らしたグランツ様がやって来た。
「リリアーヌ大丈夫か?」
「はい。大丈夫です。グランツ様は?」
「ああ、俺は大丈夫だ。向こうで二人は捕まえたのだが、一人取り逃がしてしまった。リリアーヌが無事で良かった」
グランツ様が眉を寄せながら、私の体を抱きしめてくれた。
「これぐらい大丈夫ですよ」
リリアーヌもグランツを抱きしめ返し、ふふふっと笑っていると回りからざわめきが広がっていく。
嫌だ……私ったら、皆の前で……。
ぐっとグランツ様の胸を押し返し離れようとしたが、それをグランツ様が許さなかった。絶対に離れないとばかりに腕に力を入れている。こんな風に甘やかされてベタベタされるのは嬉しいけど、さすがに人の前では恥ずかしい。
「あの……グランツ様、皆が見ているので離してもらえますか?」
私の言葉でグランツ様が少し離れるも、すぐに腰に手が回され密着させられてしまう。
「あの……グランツ様?」
「もう少しこのままで……」