自国最強の騎士団長様は私が守ります。だって私、世界最強ですから!

 *

 隣国ガルレシア王国から使者としてレモンド伯爵がやって来た。二年前に戦争が終結して以来、ガルレシア王国から使者の訪問は初めての事だった。ここで国同士の仲の良さを他国に知らしめたい所だがガルレシアは不穏な動きを見せている。そのことに気づいている近隣諸国は静かに傍観しているといった所だろう。もしこのまま国同士の情勢が崩れれば、また戦争が始まる。そうなれば沢山の血が流れることとなてしまう。それだけはどうにか避けたい。


 どうにかならないだろうか……。


 その日の夜、建国祭を祝う舞踏会が盛大に行われた。近隣諸国から王族や使者が祝いの言葉を告げているため、大広間に集まっていた。

 リリアーヌの本日の仕事は、朝から街の巡回をし、昼には城へ戻り城内の巡回、夜に行われる舞踏会会場の点検と忙しく動いていた。そして現在は王族の護衛をするべく、王族の控えの間へとやって来ていた。

「リリアーヌってば、今日も騎士服なのね。まあ、似合っているけれど」

 そう言って溜め息を付いたのはローズ様だった。そんな彼女の肩を優しく抱き寄せているのは、この国の王太子ドミニク殿下だ。

「ローズ、仕方が無いよ。彼女も仕事なんだ」

「ですが女の子ですのに、そんな格好では……」

 今は仕事中なのだから仕方の無いこと。綺麗なドレスでグランツ様と踊りたいが、私はこの服の方が落ち着く。リリアーヌは二人の会話を聞きながら肩をすくめた。

 するとドミニク殿下も肩をすくめた。可愛い婚約者の頼みでも、こればかりは無理だと、言っているようだ。そんなドミニク殿下が、突然真剣な瞳でこちらを見つめてきた。

「リリアーヌ嬢、今日はローズのことよろしく頼んだよ」

 その瞳はローズ様と過ごしている時の優しいものでは無く、今までに見たことが無いほど鋭い物だった。

 この言葉から分かるように、私は本日ローズ様付きの護衛を仰せつかっていた。

 私はドミニク殿下とローズ様の前に出ると、片膝をつき頭を垂れ騎士として主従の誓いを立てる。

「その命、承りました。必ず命に代えてもあなたをお守りします」

 リリアーヌはローズ様の手を取り、手の甲にキスを落とす。そしてスッと瞳を伏せると瞳が青緑色に変化した。

 その姿にローズは頬を染め嬉しそうに微笑んだ。

「まぁまぁまぁ……リリアーヌったら、さすが碧青の騎士様ね。ご令嬢方が騒ぐのも分かるわ」

 嬉しそうにしているローズ様を見て、ドミニク殿下がすかさずローズ様の手を取った。

「こら、ローズ。よそ見をしてはいけないよ」




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