自国最強の騎士団長様は私が守ります。だって私、世界最強ですから!

 ドミニク殿下がローズ様の顎を持って自分の方へと向かせた。見つめ合う二人はとても絵になるのだが、その甘い空気をダダ漏れさせるのは止めて頂きたい。

 二人のイチャイチャを見ながらリリアーヌが苦笑すると、グランツがわざとらしい咳払いをし一喝した。

「そういうのは二人きりの時にしろ」

 将来この国を率いることとなる二人の仲が良いことは良いことだ。リリアーヌはグランツ様の言葉に慌てる二人を見つめ、瞳を細めた。その時、扉をノックする音が聞こえてきた。

「失礼いたします。そろそろお時間です」

 その言葉に最初に反応したのはグランツ様だった。唇を引き結ぶと、視線だけで人を射殺せそうなほどの鋭い視線で回りを警戒している。そんな瞳が私と交わると一瞬だけ和らぐ。それだけで私の胸は高鳴った。

 グランツ様……。

 それにしても今日のグランツ様の姿は凜々しすぎる。

 金糸の刺繍が入った黒の騎士服に、ジャラジャラと勲章が沢山付いていて、この国の英雄にふさわしい姿だった。

 その端正な顔とたたずまいに瞳が奪われる。

 この正装姿は何度見ても(たぎ)るものがある。

 ああ……もう無理、表情筋が緩んでしまう。

 リリアーヌは必死に剣の鞘を握り絞め、スイッチを入れ直す。そんなリリアーヌの心理状態に気づくことも無く、グランツ様が私の横に立った。

「準備が整ったようなので、大広間の方へお願いいたします」

 グランツ様が胸の前で拳を握り騎士の礼を取ったのを見て、リリアーヌも同じく騎士の礼を取る。

 そんな頼もしい二人の姿に、王族達は微笑んだのだった。




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