自国最強の騎士団長様は私が守ります。だって私、世界最強ですから!
そんなリリアーヌの凜々しい姿に、女性から溜め息の声が漏れる。反対に、グランツ様を見た女性からヒソヒソと陰口が囁かれる。
「今日も怖いお顔」
「一体何を考えているのかしら。あれでは鬼ですわ」
「碧青の騎士様がお可哀想」
勝手なことを言っているわね。
女性達は怖い顔と言うけれど、私はその精悍な顔つきが大好きだ。
リリアーヌは指を使ってハンドサインで合図を送る。
すると、それに気づいたグランツ様も合図をくれた。
『どうした?何かあったか?』
心配そうにこちらを見ているグランツ様に向かって、リリアーヌは手を動かした。
『大好き』
それを見たグランツ様は口元を押さえてフッと視線を逸らした。その顔は真っ赤になっていて、リリアーヌはその姿を見てクスクスと笑った。
離れていても仲睦まじそうにする二人を見た貴族達は、それを唖然と見つめていた。あの鬼神と言われた国の英雄グランツ騎士団長が、顔を赤らめ、顔を緩めている。そんな姿を今まで誰も見たことが無い。
ゴホンと咳払いしたグランツが顔を引き締め、前を向いた。しかしそこにはリリアーヌの姿が……。もう一度リリアーヌが微笑めば、グランツも口角を上げフッと笑う。
鬼神の笑顔に皆が唖然としないわけが無かった。
「まあ、あれが鬼神と言われた。騎士団長様だというの?」
「信じられませんわ」
「あんなに素敵だったのですね」