自国最強の騎士団長様は私が守ります。だって私、世界最強ですから!

 *

「本日は皆に報告がある。このめでたい良き日に、我が息子ドミニク王太子と、ダスト公爵家令嬢ローズ嬢との婚約を発表する」

 王の言葉に会場にいた人々がいっせいに拍手喝采した。会場が祝福の声で溢れる。そんな時でもリリアーヌ達は回りを警戒することを怠らない。今のところ危険は無さそうだが、こんな時が一番危険だ。周囲の目が一つに集中している時こそが、奇襲をかけるのには最適だからだ。私ならこのチャンスを見逃さないだろう。

 しかし奇襲を掛けてくる輩は現れず、建国祭は滞りなく進んでいった。そんな時、リリアーヌはローズ様に声を掛けられた。

「リリアーヌ、お化粧を直したいの。付いてきてくれる?」

「仰せの通りに」

 リリアーヌは一礼してから、ローズ様をエスコートするように隣に立つ。

「リリアーヌは、本当に王子様みたいね。回りの女性達が羨ましそうにこちらを見ているわ」

 そう言えば回りからの視線がやけに……。

 女性達がぽーっとこちらを見ているのが気になるが、グランツ様に報告をしないと。リリアーヌはグランツに向かって指を動かした。

『ローズ様と共に少し離れます』

『了解した』

 このハンドサインは本当に使えるわね。

 今度は騎士団の全員に覚えされて、実践で使ってみようかしら。……ってそんな事を考えている場合では無いわね。今は集中しなければ。リリアーヌは回りを警戒しながら、ローズ様用に用意された一室の扉を開いた。

 特に変わった様子は無さそうだ。

 部屋のチェックを済ませ、ローズ様を部屋の中へと促した。すると、何処から現れたのか侍女数名がリリアーヌを取り囲んできた。

「……へ?」




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