自国最強の騎士団長様は私が守ります。だって私、世界最強ですから!
ちょっと、こっちは仕事中なのよ。と、大きな声で叫びたいところだが、貴族の男性達にそんな事は言えずに後ろへと後ずさっていると、リリアーヌの手を一人の男性が握ってきた。最初に声を掛けてきた男性だ。
「私とダンスを……」
そう言って、リリアーヌの手に唇が触れる……そう思った時、男の手をグランツが払いのけた。
「俺の妻に、何をしている?」
恐ろしいほどの威圧と共に睨みつけられた貴族の男性達は、小さく悲鳴を上げ後ろへと飛び退いた。グランツに手を払いのけられた男性のみが逃げ遅れ、更にグランツ様から威圧を受け続けていた。男性は気の毒なほど体が震えている。
「グランツ様、その様に睨んではそちらの方がお可哀想です」
リリアーヌがそう言うと、グランツは男性からリリアーヌへと視線を向けた。美しいリリアーヌの姿を見たグランツが頬を緩めれば、途端に張り詰めた空気が和らぐ。
「リリアーヌ、美しいな。青い花の精のように愛らしい。こんなに可愛らしい妖精は何処にも行かないように閉じ込めておかなければいけないかな」
グランツ様は甘い言葉を囁きながら私の腰を抱き寄せ、髪を一房掴むとそれに唇を落とした。グランツ様がそんな事を言うとは思っていなかったのだろう。それを聞いていた貴族令嬢達から「キャーーッ」と黄色い悲鳴が上がった。
いつも怖い顔をした男性が、甘い言葉を言う。
ギャップ萌というやつね。
悲鳴を上げたくなる気持ち、わかるわ~。