自国最強の騎士団長様は私が守ります。だって私、世界最強ですから!
そんな事より仕事中だというのに、このような姿で現れた私をグランツ様は叱ると思っていたのだが、グランツ様の甘い言葉に拍子抜けしてしまう。
そんなリリアーヌにグランツ様が手を差し伸べてきた。
「リリアーヌ踊ろうか」
「えっ……良いのですか?」
「大丈夫だ。それに先ほどからドミニクとローズが踊りたいとうるさくてな。近くで護衛をしながら踊るのも良いだろう」
グランツ様の言葉に瞳を輝かせていると、ローズ様が視界に入ってきた。ローズ様は嬉しそうに片目を瞑りウインクしてきた。
ローズ様は私が皆を見ながら羨ましそうにしていたことに気づいていたのだろう。そして気を利かせてくれたに違いない。リリアーヌはローズ様に向かって感謝を込め一礼した。そしてありがとうございますと心の中で呟く。
大広間に優雅な音楽が奏でられた。
リリアーヌはグランツの前に立ち、差し出された手を取った。グランツ様は右手に乗せられた私の手を取り、左腕を腰にホールドすると、ゆっくりとステップを踏んでいく。近くにドミニク殿下とローズ様を確認しつつも、優雅にステップを踏むグランツ様はさすがと言えよう。感心しながらも、リリアーヌはグランツ様のステップに合わせてクルリと回転する。少しずつ曲が早くなってきた。音楽が早くなるにつれてステップも難しくなっていく。しかし普段鍛えているリリアーヌは体幹がしっかりしているためどんなステップも難なくこなしていった。その優雅で美しい姿に皆が見惚れ、ほうっと息を漏らした。