自国最強の騎士団長様は私が守ります。だって私、世界最強ですから!

 フーッとリリアーヌが息を吐き出したとき、パンパンパンッと手を叩きながら一人の男が現れた。それはガルレシア王国の使者としてやって来たレモンド伯爵だった。彼は拍手しながら大広間の中央までやって来ると声を張り上げた。

「素晴らしい。さすがは鮮血姫。しかしここまでです。ルノニア王子!」

 ルノニア王子?

 王子とは一体……そんな人物は招待リストにはいなかったはず。

 レモンド伯爵の声に合わせるようにして一人の人物が動いた。

 ウソ……どうしてあなたが……。

 リリアーヌの視線の先で王に向かって剣を振り上げるルノニア王子と呼ばれた人物。咄嗟にグランツが身を挺して陛下前のに出た。シュッと音を立てて剣が振り落とされ、グランツの腕から血がしたたり落ちた。

「グランツ様!」

 グランツ様は自分が斬りつけられているにもかかわらず「チッ」と舌打ちをしながら、剣を抜き男をなぎ払った。グランツ様は自分を斬りつけてきた男を見ながら顔を(しか)めた。男はよろけながら後ろに後退し、その態勢のままもう一度剣を振り上げた。

 リリアーヌは脚力を使って一気に駆け寄ると、グランツ様を斬りつけた男の前に立ち剣を交える。すると相手の剣からポタリと血が落ちた。それはグランツ様の血だった。

 リリアーヌはその血を見ながら叫んだ。

「どうしてあなたが……」

 悲しみからリリアーヌ唇が震えた。

 どうして……。

 男は無言でこちらに剣を向けて来たため、リリアーヌはもう一度男に向かって叫んだ。

「ルーニ、どうして!」

 そう、今リリアーヌの前で剣を交えているのは、いつも人懐っこく笑うルーニだった。

 リリアーヌの前に立つルーニの顔は、いつもの人懐っこい笑顔はなりを潜め、苦痛に歪んだ表情を見せていた。ルーニはリリアーヌと剣を交えた状態で引き結んでいた口をゆっくりと開いた。

「仕方が無かったんです……俺は元々この国の人間では無いんですよ」

 ルーニは肩を振るわせながら語り出した。

 その後ろではガルレシア王国の使者、レモンド伯爵が拘束されていた。




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