自国最強の騎士団長様は私が守ります。だって私、世界最強ですから!
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ルーニ・アドバンスとしてこの国に来る前の俺の名は、ルノニア・ガルレシアだった。
ガルレシア王国の第四王子、それが俺の肩書きだ。何をやってもパッとしない俺は、王子と言っても疎まれる存在だった。父であるガルレシア国王もこんな俺を空気のように扱い、声を掛けられることも無かった。俺は大人しく城の端で生きていこうとしていたが、時々命を狙われることがあった。どうやら上の兄達は俺が王位継承を狙っていると思ったらしい。そんな事は微塵も思っていないのに……。頼むからこのまま静かに暮らさせて欲しい。孤独でもいい、ひっそり静かに生きたい。そう願いながら城で暮らし続けていた時だった。父……いや、陛下から呼び出された。
陛下と会うのは何年ぶりだろうか……。
もう忘れられていると思っていたのに……。
謁見の間へとやって来ると、目の前の王座に陛下は座っていた。昔お会いした時より年老いた父……陛下の姿がそこにあった。俺は陛下の前で膝を折り頭を垂れる。すると昔より嗄れた陛下の声が謁見の間に響いた。
「ルノニア第四王子。今、この時からお前はルーニ・アドバンスとしてルーレンス王国に潜入することを命じる。向こうに着いたらこちらの指示に従うように」
ルーレンス王国に潜入?
意味が分からず沈黙していると、陛下が茶色い瞳をこちらに向けてきた。自分と同じ色を持っているというのに、その瞳の強さは全く違う。ビクリッと体を震わせながら俺は口を開いていた。
「陛下の仰せの通りに」
ルノニア……いやもう違うのか、ルーニに拒否権など無かった。
ルーニは頭を下げると陛下に背を向けた。
これは国外追放なのだろうか?
文句も言わずにひっそりと城の端で生きてきた……。
だと言うのに、見放された……。
部屋に戻る途中、第三王子とすれ違った。
「クククッ……この無能が」
無能……。
俺はこの国とって必要の無い人間。
だから俺は排除される。
俺が一体何をした?
何もしていない……。
違う、何もしなかったんだ。
努力もせず、ひたすら城の隅に隠れて生きていただけ。
今更後悔しても遅いというのに……ルーニは唇を噛みしめ、その場から逃げた。