自国最強の騎士団長様は私が守ります。だって私、世界最強ですから!
陛下から命を受け、ルーレンス王国へとやって来てから一年が過ぎようとしていた。俺は騎士団に入隊し、その時を待っていた。しかし陛下から指示を受けることは無かった。ルーニはルーレンス王国とガルレシア王国との文化の違いに戸惑いながら、毎日騎士団での辛い訓練をこなしている。体力の無いルーニは基礎訓練ばかりで一年経っても新人騎士扱いのままだ。そんな日々が続くと、身も心も疲弊していく。
もともと城でひっそりと暮らしてきた俺は、剣など振り回したことが無い。基礎は習っていても、それを職にすることなど考えてもいなかった。手にはマメが出来、つぶれの繰り返しで、手の皮が厚くなってきた。
もう嫌だ……。
ここから逃げ出したい。
ルーレンス王国にいる限り俺はよそ者だ。
ルーレンス王国の国民にはなれない。
いっそう王子という肩書きを捨て、この国の民として生きていきたいと思うがそれも出来ない。味方のいないここでは孤独しかない。仲間が出来ても、孤独感がついてまわる。
そんな俺にもこの国の人々は優しい。この人達を裏切ることをこらから俺はしなくてはいけないかもしれない……それならいっそう死んでしまおうか。そう思うようになっていたある日、騎士団長の結婚の報告が騎士団の宿舎を沸かせた。
あの騎士団長が結婚?
それから王太子の誕生祭で、運命の出会いをした。
俺はガルレシアの同胞達を城に入れる手はずを整え、警備をするふりをしてその時を待った。そして大広間の様子を確認して同胞を城内に招き入れる合図を送った。これで手柄を立てれば国に帰れる……キツい訓練をしなくてもすむ。そんな事を考えていた俺の前に、女神のように美しいその人は現れた。