自国最強の騎士団長様は私が守ります。だって私、世界最強ですから!
女神はまるでダンスを踊るかのように剣を振るい、クルリと回転する。女神がクルリと回転するたびに花が咲いたようにドレスの裾が広がった。目がおかしくなったのか、花びらが散る幻覚まで見える。
「美しい……」
俺は青緑色の瞳を光らせる美しい女神に、心を奪われた。
黒フードの同胞達が囚われていく中で、ルーニの目は青緑色の瞳の女神を追っていた。そして気づいてしまう、その目が団長を見ていることに……。
どういうことだ?
女神と再び出会ったのは、団長の奥様としてだった。
そんな……。
団長の奥様だっただなんて……。
絶望だった……この国に追放された時と同じぐらい打ちのめされた。
リリアーヌ様……。
もう少し早く出会っていたら……。
そんな事が頭をよぎる。
しかしこればかりはどうにも出来ない。
時間を遡ることなど出来ないのだから。
この思いには、気づかなかったことにしよう。
俺はリリアーヌ様への思いに蓋をした。
これは恋では無い。
忠誠心だと。
俺は遠くからリリアーヌ様を見守ることが出来ればそれでいい。
自分の思いに蓋をしてから数日、俺は気づいてしまったんだ。団長とリリアーヌ様の関係性に……。二人は政略結婚だと聞いている。いつもギクシャクとしていて、仲睦まじいとはお世辞にも言えない。
俺だったらリリアーヌ様にあんな顔はさせないのに……。
蓋をしたはずの感情が少しずつ漏れ出すのを感じた。
ダメだ抑えろ。
日に日に辛そうな顔をするリリアーヌ様。
また、あんな顔をして……団長はどうしてリリアーヌ様を大切にしてあげないんだ。
俺なら、俺なら……。
リリアーヌ様が笑顔でいられるなら何だってする。
大切にして、甘やかして、どこまでも甘やかして、愛を囁くのに……。
これは忠誠心だと言い聞かせるのも限界にきていたときだった。
ローズ様が団長を訪ねてやって来た。
この二人は元婚約者同士だ。
一体何の用事で?
何だか嫌な予感がする。