自国最強の騎士団長様は私が守ります。だって私、世界最強ですから!
*
あの日から団長とリリアーヌ様の距離が近づいたような気がしている。
俺はとんだ当て馬だった。
リリアーヌ様が笑顔ならそれでいいと思う反面、自分の胸はズキリと痛んだ。
蓋をしていた思いを解放してすぐに失恋だなんて……。
失恋とはこんなに辛いモノなんだな。
楽しそうに微笑み合う二人を見ているだけで、心に少しずつヒビが入っていく。
小さなヒビが、大きくなり、粉々になって崩れた。
どうしてあなたは俺のモノにならない。
どうして俺の思いに気づかない。
どうして俺の思いに応えてくれない。
どうして俺に愛をくれない。
どうして……どうして……どうして……。
誰も俺を愛してくれない。
暗闇に足を囚われ、ズルズルと引き込まれる様な毎日を過ごしている時だった。
父……ガルレシア王国の王から一通の手紙が届いた。
『ルーレンス王国の建国祭、王太子の誕生祭と同じように侵入経路を整えよ』
たった一行だけの手紙……。
こちらを気遣い、心配する様子が一切無い手紙にルーニは苦笑した。
ああ……ホントにクソだな。
どいつもこいつも、自分の事ばかり。
どうせ失敗するに決まっていると、そう思いながら準備を進めていく俺。
この時俺は自暴自棄になっていた。
俺はフードを深くかぶり酒場へとやって来ていた。カウンターの左端にひっそりと座り、強めの酒を一気に煽った。ほどなくして隣に同じくフードをかぶった男が座った。男は回りに声が漏れないようボソボソとこちらに話しかけてきた。
「陛下からの伝言です。『今回の計画が上手くいけば、鮮血姫をどのようにしてもかまわない。上手くやれ』との事です」
リリアーヌ様を……?
俺の思いに応えてくれないのなら、無理矢理にでも俺のモノにしてしまえばいい。
ドス黒い感情が体を満たしていく。
俺はこの時、最悪の選択をしたんだ。
そして現在、俺は団長を斬りつけた血のしたたる剣を握り絞めた状態で、リリアーヌさまと剣を交えていた。