自国最強の騎士団長様は私が守ります。だって私、世界最強ですから!

 *

 今までの経緯をルーニは仄暗い顔で語ってくれた。その顔は今までに見せてくれていた人懐っこい笑顔とはほど遠い顔をしていて、生気の無い瞳でリリアーヌを見つめてくる。そんな感情の抜け落ちたようなルーニの瞳をリリアーヌは見つめながら話しかけた。

「ルーニ、剣を降ろしなさい。ガルレシアの使者レモンド伯爵も拘束された今、ガルレシア側に勝機はありません。ルーニあなたも未遂とはいえ王族を暗殺しようとした罪で拘束しなければなりません」

 そう言葉にしながらリリアーヌは顔を歪めた。

 今は泣いてはダメよ。

 仲間だと思っていたルーニに裏切られたことで、落胆、失望、失意、悲愴と色々な感情がわき上がる。

「お願い、ルーニ……大人しく拘束されて下さい」

 リリアーヌの悲しそうな顔を見たルーニが、唇を噛みしめる。

 お願いルー二、あなたを傷つけたくない。

 ルーニの瞳に語りかけるように見つめると、その瞳の奥に悲しみが見えた。

「ルーニ、お願い」

 リリアーヌは更に訴えかける。

 「くっ……」と悲痛な声を漏らしながら交えていた剣の力を抜いたのはルーニだった。

 ルーニはゆっくりと剣を降ろすと、そのまま床に落とした。

 ガシャンと剣が音を立てるのと同時に、騎士達がルーニに駆け寄った。ルーニは両膝を床につけ、暴れる様子も無いため、騎士達は拘束すること無く、その肩や頭をポンポンと叩いている。それはまるで兄弟を叱るかのようだった。ルーニの生い立ちに同情したと言うのもあったのだろうが、一年以上を一緒に過ごした仲間を思ってのことだったのだろうと思う。

「何故相談しなかった」

「仲間だろうが」

 騎士達が声を掛けながらルーニを小突いていくと、ルーニは小さな声で謝罪した。

「ごめんなさい……」

 それを聞いた騎士達は、今度はルーニの頭を撫でた。沢山の手で頭を撫でられていたルーニは、感情の失われていた瞳から、涙を溢れさせた。

「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……」




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