自国最強の騎士団長様は私が守ります。だって私、世界最強ですから!
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「今日もグランツ様は執務室で書類とにらめっこ?」
フーッと溜め息を付いているとサラが隣で微笑んだ。
「ふふふっ……リリアーヌ様はグランツ様にかまってもらいたくて仕方が無い様子ですね」
「なっ……えっ……その……」
「サラには隠さなくても良いのですよ」
「サラったら……そんな事より本棚の整理をしてしまわなくては」
クルリと背を向け本棚に向き直ると、後ろから誰かに抱きしめられる。私の後ろを取るなんて、そんな事が出来る人は一人しかいない。
「リリアーヌ、随分と楽しそうだな」
「あっ……グランツ様、仕事中に申し訳ありません。気を抜いておりました」
「大丈夫だ。リリアーヌは真面目すぎる。たまには息抜きをするぐらい許されるさ」
フッと口角を上げるグランツ様。
今日も安定の格好良さです!
「大好きです」
思わず心の声が漏れ出してしまうと、グランツ様の体がピクリと動いた。
「リリアーヌ……」
グランツ様が私の名を呼ぶと、いきなり膝下に腕を回し入れ、背中を支えながら軽々と抱き上げられてしまった。
「きゃっ……グランツ様?!」
慌てるリリアーヌの耳元でグランツ様が囁いた。
「俺もだよ」
そのまま歩き出したグランツ様に、副団長であるアロンが慌てて声を掛けてきた。
「おい、グランツ何処に行く!」
「帰る」
「帰るって、残った仕事はどうするんだ」
「なんとかなるだろう。後は頼んだ。」
「ちょっ……、待て二人が帰ったらやばいだろう!戻って」
「無理だこんなに可愛い妻がいるのに帰らずにはいられない」
アロンの言葉も聞かずにグランツ様はズンズンと歩いて行ってしまう。
後ろからアロン様の叫び声が聞こえてくるが、グランツ様は戻るつもりはないらしい。
「あの……グランツ様よろしいのですか?」
「大丈夫だ。今日の仕事はほとんど終わっているし、明日に回してもかまわない物ばかりだったからな」
そう言いながらグランツ様がジッとこちらを眺めてきた。私はそっと目を瞑りその時を待つ、するとチュッというリップ音と共に唇が重ねられた。
アレンの叫び声を聞きながら、この国は平和だなと思う二人だった。
* FIN *