自国最強の騎士団長様は私が守ります。だって私、世界最強ですから!
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街に着くとグランツはすぐに巡回を開始した。街の様子を観察しながら目を光らせる。そのグランツの眼光に、悪事を働こうとした人間も、善良な人々も震え上がる。街の雰囲気がピリリとしているが、グランツは気にした様子も無く歩いて行く。さすがに第一騎士団の団長が巡回している中で悪さをする人も現れず、巡回時間が終わろうとしていた。
もうそろそろ帰る時間か……グランツがそう思っていた時に事件は起きた。
「キャーー」
女性の悲鳴だ。
グランツはすぐに悲鳴の聞こえた方へと走って向かった。すると、大きな体躯の男二人が胸ぐらをつかみ、睨み合っていた。
まずいな……グランツは走りながらまだ遠くにいる男達を見てそう思った。どちらかが手を上げれば、すぐに殴り合いの喧嘩が始まってしまうだろう。その時、男性の拳が相手の頬にめり込んだ。
しまった。
始まってしまったか……。
男二人によるもみ合いの喧嘩が始まり、周りにいる人々は為す術も無く女性は悲鳴を上げていた。
それもそうだろう。
あれだけ大きな体躯の男二人を前に、果敢に挑む人間はまずいない。
男二人は頭に血が上っているのだろう。怒鳴り会いながら、殴り合いを続けている。このような時は頭を冷やさせるために、一喝すれば動きは止まる。グランツは大きな声を張り上げるべく、肺に酸素を取り込んだ。しかしグランツが声を発することは無かった。
「止めなさい!」