自国最強の騎士団長様は私が守ります。だって私、世界最強ですから!
グランツは少し離れた場所から様子を窺った。これなら騎士団が出て行く必要は無いだろう。むしろここで騎士団が出て行けば大事になってしまう。そう思いグランツがその場を離れようとした時だった。
「碧青の騎士め、兄貴の敵ーー!!」
一人の男がナイフを振り上げながら碧青の騎士に突っ込んで行った。
危ない!
俺が走り出そうとした時、蜂蜜色の髪を降らしながら碧青の騎士が、帯剣していた剣を抜く。まるでダンスを踊るようなステップで男と対峙すると、意思の強そうな青緑色の瞳が光り、剣とナイフが交わる。男が渾身の力を込め、一歩前に踏み出すと、その力を利用して碧青の騎士がクルリと回転した。まるで踊っているかの様なその姿に、回りで見守っていた人々から歓声が上がる。最近では見慣れた光景なのだろう。
碧青の騎士……本当に騎士団にスカウトできないだろうか?
グランツが本気でそんな事を考えていると、いつの間にか碧青の騎士に蹴り飛ばせれた男が地面に転がっていた。どうやらこの男は以前、碧青の騎士に捕らえられた賊の子分らしい。男は地面に転がりながらうめき声を上げていた。
終わったか……グランツは転がっている男の元まで行き、拘束を始めた。それから後ろを向いていた碧青の騎士に向かって声を掛けた。
「きみは大丈夫か?」
すると碧青の騎士はビクリッと肩を振るわせた。
一体どうしたのだろうか?
男を拘束し終えた俺は碧青の騎士に近づき声を掛けようとした。すると碧青の騎士は振り向くこと無く、その場から走り出してしまった。
「ちょっ……待ってくれ!」
俺の声は碧青の騎士に届いているはずだ。しかし碧青の騎士は振り向くことは無く人混みをスルリとすり抜け、消えて行ってしまった。