自国最強の騎士団長様は私が守ります。だって私、世界最強ですから!
*
屋敷に帰ってきたリリアーヌは頭を抱えていた。
「思いっきり見られてしまったわよね?」
「そうですね」
「バレたと思う?」
「いえ、大丈夫ではないでしょうか?」
「そうかしら……」
「リリアーヌ様が剣を持った時の様子は、普段とは別人ですので大丈夫かと」
はぁーー。と、リリアーヌが大きく溜め息をついた所で、屋敷がにわかに騒がしくなった。
どうしたのかしら?
廊下を出ると、玄関の方から男性の声が聞こえてきた。それは先ほど聞いた、低く通る声……。
グランツ様……。
まさか、私の正体がバレて確かめに帰って来た?
まずいわ……どうすれば良いの?
旦那様であるグランツ様を玄関で迎えなければならないというのに、体が動かない。固まるリリアーヌの背中をサラがそっと押してくれた。
「リリアーヌ様大丈夫です。さあ、行きましょう」
リリアーヌはゆっくりと階段を降り、グランツ様の前まで歩いて行った。
足がガクガクする。
覚悟を決めなければ……。
私に気づいたグランツ様がゆっくりとこちらにやって来た。リリアーヌはドレスを軽くつまみカーテシーのままグランツ様を待った。グランツ様が私の前で止まったのを確認してそっと顔を上げると、また困った様な笑顔を向けられた。いつもと変わらないグランツの様子にリリアーヌはホッと体から力を抜いた。
よかった。
バレたわけでは無いようね。
サラの方へと視線を向けると、サラの口角がクイッと上がった。
こう言うときのサラは男前だ。
それに何でも分かっている様子の優秀すぎる専属メイドに感謝しかない。
リリアーヌは心の中でお礼を言った。
それも分かっています。と言いたげに、サラの目が細められた。